【結論】自己破産で退職金やiDeCoはどうなる?
長年のお勤めの大切な証であり、老後の支えとなる退職金や確定拠出年金。借金の整理をご検討される際、「自己破産をすると老後の資金まで全て失ってしまうのではないか」とご不安に思われる方は多くいらっしゃいます。債務整理の全体像については、債務整理で家・車・預金はなくなる?北九州エリアの運用と守る方法で体系的に解説していますが、ここでは特に退職金とiDeCoに焦点を絞り、現役の破産管財人が、法的な保護の仕組みと、地元の裁判所の具体的な運用基準を丁寧にご説明いたします。
まず、ご安心いただくために、この記事の結論からお伝えします。
企業型DC・iDeCoは法律で保護され、原則として破産手続で換価の対象になりません
企業型DC(企業型確定拠出年金)やiDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後の生活保障のために設けられた制度です。確定拠出年金法では、給付を受け取る権利(受給権)は譲渡や担保提供、差押えができないと定められており、自己破産をしても原則として破産手続で換価の対象になりません。
退職金は「見込額の8分の1」が20万円以下なら全額残せます
将来お受け取りになる「退職金」については、裁判所の運用によって扱いが異なります。私どもが管財業務を行う福岡地裁小倉支部の運用では、現時点で退職した場合に受け取れる「見込額の8分の1」が20万円以下であれば、全額をお手元に残していただくことが可能です。
正確な判断には専門家による書類の確認が不可欠です
上記はあくまで原則的なお話であり、最終的な判断は、皆さまがお勤めの会社の退職金規程や、加入されている年金制度の詳細を確認して初めて可能となります。インターネット上の情報だけで安易に自己判断されるのは大変危険です。必ず専門家へご相談ください。

ご安心ください。iDeCoや企業型DCは「差押禁止財産」です
自己破産の手続きでは、原則としてめぼしい財産は債権者への配当のために換価(現金化)の対象となります。しかし、iDeCoや企業型DCといった確定拠出年金は、その性質上、特別に法律で保護されています。
具体的には、「確定拠出年金法」において、これらの年金を受け取る権利は「差押禁止財産」と定められています。これは、国が老後の生活保障という重要な目的を重視しているためです。したがって、自己破産のお手続きを進めたとしても、確定拠出年金の受給権は法律上差押えができないとされているため、破産管財人がこれを前提に解約して配当に回す、という取り扱いは通常は想定されません。もっとも、個別の制度設計や受給状況、給付金の受け取り方(受給後の資金管理の方法)等によって検討が必要となる場面もありますので、具体的には資料を拝見した上で整理いたします。自己破産をしても、必ずしもすべての財産や権利を失うわけではなく、支払い義務が残る債務がある一方で、このように法律で守られる資産も存在するのです。
将来の「退職金」の扱いは?小倉支部の具体的な運用基準
では、企業型DCやiDeCo以外の、いわゆる一般的な「退職金」についてはどうでしょうか。
まだ退職されておらず、お手元に現金としてない場合でも、将来退職金を受け取る権利(退職金債権)は、法律上「財産」と見なされます。この扱いは全国の裁判所で共通ですが、その評価方法やどこまでを手元に残せるかという基準は、各裁判所の運用に委ねられているのが実情です。
私が破産管財人として活動している福岡地方裁判所小倉支部では、以下の基準で運用されています。
【小倉支部の運用基準】
まず、申立ての時点で自己都合退職した場合の「退職金支給見込額」を算出します。
そして、その「8分の1」の金額を財産としての評価額といたします。
この評価額が20万円以下であれば、退職金債権の全額を換価の対象とせず、お手元に残す(自由財産として扱う)という運用がなされています。
例えば、退職金の見込額が160万円の方であれば、その8分の1は20万円です。このケースでは、20万円という基準額に収まるため、将来受け取る退職金160万円そのものについては、少なくとも退職金債権の評価の観点では大きな問題になりにくいと考えられます。ただし、最終的な見通しは、他の財産状況や個別事情も踏まえて判断する必要があります。これは、公務員や大手企業にお勤めの方にとっても、非常に重要な基準となります。
評価額が20万円を超えてしまう場合の現実的なお話
一方で、退職金見込額の8分の1が20万円を超えてしまう場合はどうなるのでしょうか。この点についても、誠実にご説明させていただきます。
この場合、原則として、20万円を超えた部分だけを納めるのではなく、算出した「8分の1の全額」を破産財団(債権者への配当等のために管財人が管理する財産)へ組み入れていただく(お支払いいただく)必要が生じます。
例えば、退職金見込額が240万円の場合、その8分の1は「30万円」となります。基準である20万円を超えているため、超過分の10万円ではなく、「30万円全額」を破産財団へお支払いいただくことになります(※退職金そのものを全額没収されるわけではなく、あくまで「評価額である30万円」をご準備いただく形となります)。
もちろん、ご病気や介護など、ご家庭に特別な事情がある場合には、「自由財産の範囲拡張」という裁判所への申立てにより、支払うべき金額の減免が認められる可能性もゼロではありません。しかしながら、これには裁判所の厳格な審査があり、認められるケースは限定的です。過度なご期待は禁物であるという厳しい現実も、専門家としてお伝えしなければなりません。状況によっては、財産を残しやすい個人再生など他の手続きを検討すべき場合もございます。
お手続きに関するよくあるご質問
Q. 自分の退職金見込額を調べるにはどうすればよいですか?
A. 最も確実な方法は、お勤め先の総務部や人事部のご担当者様へ「退職金見込額証明書」の発行をご依頼いただくことです。自己破産のためとは言いにくいかと存じますので、一般的には「住宅ローンの審査で必要になった」といった理由でお取りになる方が多いようです。どうしても証明書の取得が難しい場合は、会社の「就業規則」や「退職金規程」の写しをお持ちください。それらの資料を基に、私どもで裁判所に提出可能な見込額の計算書を作成いたします。
Q. まとまった弁護士費用を用意できないのですが…
A. ご安心ください。ご依頼後、当事務所から受任通知をお送りすると、貸金業者等からの直接の督促が原則として止まり、以後は当事務所が窓口となります。そのうえで、申立てや生活再建に必要な費用を優先して準備するため、返済はいったんお待ちいただく運用となることが一般的です(個別の事情により対応が異なる場合があります)。お手元にまとまった資金がなくても、生活再建への一歩を踏み出すことができますので、まずは費用のことを心配なさらずにご相談いただければと存じます。具体的な自己破産にかかる費用については、ご状況に応じて丁寧にご説明いたします。
大切な老後資金、地元の専門家と正確な見通しを立てませんか
長年のお勤めで築いてこられた退職金や年金は、皆さまの今後のご生活を支える、かけがえのない大切なご資産です。だからこそ、自己破産という手続きにおいて、それらがどう扱われるのかという点は、インターネット上の不確かな一般論に頼るべきではありません。
最も確実な道は、実際にあなたの財産を審査することになる地元の裁判所(福岡地裁小倉支部)の運用を知り尽くした専門家、すなわち現役の破産管財人・再生委員にご相談いただくことです。
退職金規程や確定拠出年金の状況が分かる書類などをお持ちの上で、ぜひ一度、小倉の事務所で直接お話をお聞かせください。私、弁護士の平井が、法的な基準に則り、あなたの人生の再出発に向けた最も穏当な道筋を、誠心誠意ご提案させていただきます。60代、70代の方からのご相談も数多くお受けしておりますので、どうぞご安心ください。

北九州・小倉の法律事務所「平井・柏﨑法律事務所」で、暮らしに寄り添った法的サポートを行っています。債務整理、離婚問題や不倫慰謝料請求、交通事故など、身近な悩みに丁寧に耳を傾け、安心できる解決を目指しています。小倉駅から徒歩5分、アクセスも便利。地域のみなさまが気軽に相談できる場所でありたいと考えています。
