死亡事故の慰謝料と相続人について

交通事故により大切な家族や親族を失われたご遺族の方たちの悲しみは、計り知れないものだと存じます。

そのような中でも、ご遺族の方は、関係各所への届出や相続などの手続きに加え、加害者や相手方保険会社と交通事故の賠償金に関する話も進めていかなければなりません。

死亡事故による直接の被害者は被害に遭われたご本人なのですが、お亡くなりになっていますから、被害者ご本人が示談交渉の当事者となることはできません。

そのため、基本的には、被害者ご本人の損害賠償請求権を相続したご遺族(相続人)が、加害者や相手方保険会社との示談交渉を進めていくことになります。

ここでは、死亡事故によりどのような方が相続人となるのか、ご遺族の方たちが賠償請求することができる損害の内容について、北九州・小倉の弁護士が説明いたします。

1 損害賠償と相続

交通事故被害に遭い亡くなった方(故人)がいた場合、民法で定められた「相続人」に該当する方が、故人の慰謝料や逸失利益などを相続し、加害者や相手方保険会社に賠償請求をしていくことになります。

以下では、死亡事故で損害賠償請求を行う「相続人」が誰になるのか、ケースごとに解説していきます。

(1) 被害者が既婚者で子どもがいるケース

例えば、夫婦2人と1人の子どもがいる3人家族のケースにおいて、夫が亡くなった場合の相続人は、妻と子どもになります。

この場合の相続分の割合は、妻が2分の1、子どもが2分の1になります。なお、子どもが2人の場合は、子どもたちが2分の1を等分することになるため、この場合は子どもの相続分の割合は各4分の1ということになります。

(2) 被害者が既婚者で子どもがいないケース

親が健在

例えば、夫婦2人で子どもがおらず、夫の母が健在であるケースにおいて、夫が亡くなった場合の相続人は、妻と夫の母になります。

この場合の相続分の割合は、妻が3分の2、母が3分の1になります。なお、両親が健在の場合は、両親が3分の1を等分することになるため、この場合の両親の相続分の割合は各6分の1ということになります。

両親・祖父母は亡くなっているが兄弟姉妹がいる

例えば、夫婦2人で子どもがおらず、夫の両親・祖父母は亡くなっているが兄がいるケースにおいて、夫が亡くなった場合の相続人は、妻と兄になります。

この場合の相続分の割合は、妻が4分の3、兄が4分の1になります。なお、兄と弟がいる場合は、兄弟が4分の1を等分することになるため、この場合の兄弟の相続分の割合は各8分の1ということになります。

(3) 被害者が独身の場合

被害者が独身のケースは、親が相続人となります。

両親とも健在であれば、相続分は各2分の1となり、父母のどちらかが既に亡くなっている場合には、健在の親がすべてを相続します。

また、両親・祖父母とも死亡事故以前に亡くなっている場合は、兄弟姉妹が相続人となり、法定相続分は人数で等分ということになります。

2 死亡事故における損害賠償について

被害者遺族の方が加害者に対して賠償請求することができる損害としては、主に死亡慰謝料と死亡事故における逸失利益があります。

(1) 死亡慰謝料について

死亡慰謝料においては、①亡くなられた被害者ご本人の慰謝料②遺族の方固有の慰謝料が存在します。

①については、亡くなられた被害者ご本人の慰謝料請求権であるため、相続の対象となり、請求できる方は相続人の方だけということになります。

つまり、上記の1の⑴のケースで両親が健在の場合、妻子は相続人であるため賠償請求をすることができますが、両親は相続人でないため賠償請求をすることができないということになります。

もっとも、②については遺族の方固有の請求権であり、相続したものではないため、相続人ではない両親も請求することできます。

なお、②遺族固有の慰謝料が認められるのは、自賠責保険では被害者の配偶者、被害者の子、被害者の父母となっています。また、裁判上では兄弟などにも慰謝料が認められる場合もあり、これに限定される訳ではありません。

⑵ 死亡慰謝料の三つの基準について

死亡事故の慰謝料も、傷害慰謝料(入通院慰謝料)や後遺障害慰謝料と同様に、自賠責基準任意保険基準弁護士基準(裁判所基準ともいいます。)があります。

自賠責基準

自賠責基準は、自賠責保険で保険金を計算する際に利用されているものです。自賠責保険は、もともと交通事故被害者に対する最低限の給付を目的とする保険であるため、支払金額も当然低くなります。

具体的には以下のような金額になっています。

  • 死亡事故の被害者本人の慰謝料 400万円
  • 遺族(配偶者・子・父母)の慰謝料
    ・遺族1名の場合 550万円
    ・遺族2名の場合 650万円
    ・遺族3名以上の場合  750万円

なお、被害者に扶養されていた者がいる場合、上記金額に200万円が加算されます。

任意保険基準

任意保険基準は、任意保険会社が保険金を計算するために独自に定めている基準です。自賠責基準よりは多少高めに設定されていることが多いようですが、後述する弁護士基準と比べるとかなり低い金額に設定されています。

弁護士基準

弁護士基準は、過去の裁判例等を元にした法的に根拠のある正当な基準です。裁判で慰謝料を請求するときにも採用されているものなので、裁判所基準とも呼ばれています。

金額的にも上記の3つの基準の中で最も高額になります。弁護士が被害者の方の代理人となって示談交渉を行うと、弁護士基準を前提として交渉を行うため、被害者本人が任意保険会社と直接交渉を進めた場合と比べ、大幅に示談金が増額されることになります。

なお、被害者本人が弁護士基準で計算することを求めても、任意保険会社が応じることはありません。

具体的には以下のような金額になっています。以下の金額には、上記の自賠責基準にあった遺族の慰謝料も含まれています。実際の裁判では、事案ごとの個別事情により増額されることもあります。

  • 被害者が一家の支柱の場合 2800万円
  • 被害者が母親・配偶者の場合 2500万円
  • 被害者がその他の場合 2000~2500万円

なお、「その他」とは、独身の男女、子供、高齢者などとされています。

このように、死亡慰謝料については、どの基準を採用するかにより大きく賠償額が異なってくることになるため、注意が必要です。

(3) 死亡事故における逸失利益について

死亡事故における逸失利益とは、交通事故の被害者の方が事故に遭い亡くなってしまったことにより、得られなくなった将来得られたであろう収入のことをいいます。

この損害については、相続人の方々が相続することになるので、相続人の方々が加害者や相手方保険会社に請求していくことになります。

死亡事故における逸失利益は、原則として以下の計算式により算出されます。

①基礎収入×②(1-生活費控除率)×③就労可能年数に対応するライプニッツ係数

①基礎収入額について

原則として、事故前の1年間の収入が基礎収入となります。

亡くなられた被害者の方の職業によって内容が異なるので簡単に説明します。

サラリーマンの方が亡くなられた場合には、原則どおり事故前1年間の控除前の総支給額が基礎収入となります。

自営業やフリーランスの方が亡くなられた場合には、事故前年の確定申告の申告所得額が基礎収入となります。もっとも、申告所得額が実態と異なっている方もいらっしゃいます。

そのような場合には、実際の収入額を客観的資料により証明することができれば、実際の収入額が基礎収入となります。

家事従事者(主婦(主夫))の方が亡くなられた場合には、給料という形の収入こそありませんが、家事労働には経済的な価値があると認められているので、家事従事者方であっても逸失利益を請求することができます。

具体的には、全年齢の女性の平均賃金を基礎収入とします。

高齢者の方が亡くなられ、その方が年金を受給していた場合は、その年金を将来受け取ることができなくなってしまうので、逸失利益を請求することができ、年金額を基礎収入とします。

子ども(学生の方)が亡くなられた場合は、収入はありませんが、将来働くことで得られるはずであった分について逸失利益を請求することができます。具体的には、男女別の全年齢の平均賃金を基礎収入とします。大学生の方の場合は、大卒者の平均賃金を基礎収入とします。

②生活費の控除率について

亡くなられたことにより生活費がかからなくなるため、その分を控除する必要があります。原則として以下の割合を収入額から控除します。

  • 一家の支柱:30~40%を収入額より控除
  • 女子(主婦・独身・幼児を含む):30~40%を収入額より控除
  • 男子(独身・幼児を含む):50%を収入額より控除

③就労可能年数に対応するライプニッツ係数

原則として、67歳までを就労可能年数としますが、開業医・弁護士については70歳までとされる場合もあります。およそ55歳以上の高齢者(主婦を含む)については67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長期の方を使用します。

また、逸失利益は、原則として、全額が一括で支払われるのですが、将来の賠償金を先に受け取ることになるので、上記の年数に対応する、将来の利息(中間利息)を考慮した数値を用いて計算することになります。これをライプニッツ係数といいます。

例えば、死亡時の年齢が50歳であれば、就労可能年数が12年(67歳-50歳)となります。そして、就労可能年数が12年の場合のライプニッツ係数は「9.954」となるので、この係数を用いて計算していくことになります。

このような死亡事故における逸失利益については、相手方保険会社が適切な基礎収入や就労可能年数を採用しているのかなど問題となる点が多くあり、そのどれもが賠償金額に大きな影響を与えるものであるため、注意が必要です。

まとめ

以上のように、相続人を確定させるには一定程度の法的知識が必要ですし、死亡事故に関する賠償金は極めて高額になるため、争点それぞれが賠償金額に大きな影響を与えることになります。

そこで、死亡事故によりご家族やご親族を失われたご遺族の方たちは、交通事故事案に注力する弁護士に相談・依頼されることをおすすめいたします。

当事務所では、交通事故に遭われた方、そのご遺族の方に、お気軽にご相談いただけるよう、交通事故に関する初回相談を無料で行っておりますので、是非、北九州・小倉の当事務所までお気軽にご相談ください。

交通事故でご家族やご親族を失った悲しみは決して癒えるものではありませんが、弁護士に相談し、交渉を任せることで、負担が軽くなり、少しでもお気持ちが楽になるよう全力でサポートさせていただきます。  

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