相手方保険会社から過失割合を提示されたものの、「過失割合に納得できない」、「過失割合の根拠がわからない」、「相手方の過失が低すぎる」、「加害者が事故態様について嘘を言っている」というケースは少なくありません。
過失割合は、交通事故の賠償金の金額に大きく影響を与える大変重要なものです。
そこで、交通事故被害に遭った際に特に問題となる過失割合について、北九州・小倉の弁護士が解説いたします。
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過失割合とは
過失割合とは、交通事故当事者(被害者と加害者)のそれぞれの落ち度(責任)の割合のことです。
追突事故であれば、追突した側が加害者として100%の責任を負うことが明らかです。
しかし、交差点における出会い頭事故のように、当事者双方に左右確認を怠った過失がある場合には、被害者の方であってもその過失の割合に応じて賠償額が減額されることになります。
過失割合は賠償額に影響する
当事者Aの損害額が200万円、当事者Bの損害額が100万円である場合を例に説明します。
当事者Aの過失を40%、当事者Bの過失を60%で考えた場合、当事者Aが請求できる金額は120万円(200万円×60%)、当事者Bが請求できる金額は40万円(100万円×40%)となります。
そうすると、実際に当事者Aの手元に残る賠償金は120万円から40万円を差し引いた80万円ということになります。
これに対して、当事者Aの過失を30%、当事者Bの過失を70%で考えた場合、当事者Aが請求できる金額は140万円(200万円×70%)、当事者Bが請求できる金額は30万円(100万円×30%)となります。
そうすると、実際に当事者Aの手元に残る賠償金は140万円から30万円を差し引いた110万円ということになります。
このように、過失割合が10%違うだけで手元に残る賠償金が数十万円異なることも多々ありますし、損害額が高額な場合には数百万円の差が生じることもあります。
過失割合の決まり方
交通事故実務上では、過去の裁判例の蓄積などにより、交通事故の状況を一般化・類型化し、ケース毎に基本的な過失割合とそれを修正すべき要素が定められています。
これが記載されている書籍が「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」(別冊判例タイムズ38)であり、実務上「判タ基準」などと呼ばれています。
このように、過失割合の基準はある程度類型化されているのですが、加害者側の保険会社が常に適切な判タ基準の交通事故類型を選択しているわけではありませんし、そもそも加害者本人が自身に都合の良い説明しかしていない場合もあります。
そのため、加害者側保険会社が適切な過失割合の提案をしていないときには、事故態様などについて争っていかなければなりません。
過失割合の争い方
事故態様に争いがある場合
事故態様について、当事者(被害者と加害者)の認識が異なる場合(例えば、交差点に進入した際の信号が赤だったのか青だったのか等)、当然それぞれが選択する判タ基準の事故類型が違ってくることになります。
このような場合は、自分が主張する事故態様であったことを証明する必要があります。
ドライブレコーダーや防犯カメラの映像は、客観性の高いものであり、有力な証拠になります。
このような映像がない場合にも、第三者機関である警察により、自分の言い分に沿った内容で実況見分調書や物件事故報告書等の捜査記録が作成されていれば、これも有力な証拠になります。
しかし、このような決め手になるような証拠がない場合においては、被害者と加害者のそれぞれの供述が主な証拠となりますが、お互いに客観的な証拠がない以上、納得できる過失割合での解決は難しくなり、示談ができないような場合には、訴訟を提起し裁判所の判断に委ねることになります。
不適切な判タ基準の交通事故類型を選択している場合
例えば、車線変更事故においては、直進車が車線変更車の前方と後方のどちらを走行していたのか、車線変更を開始時点での車両の距離などで過失割合が異なってきます。
判タ基準により類型化されている車線変更事故の基本的な過失割合は、車線変更車70%、直進車30%となっていますが、これは直進車が車線変更車の後方を走行していたことが前提となっています。
そのため、直進車が車線変更車の前方を走行していた場合においては、車線変更車の責任割合が重くなる可能性がありますし、車線変更を開始した時点での車間距離が近接していた場合には、車線変更車が100%の責任を負う可能性もあります。
そうであるにもかかわらず、加害者側保険会社がそのような事情を考慮せず、不適切な判タ基準の基本的過失割合を提示してきている場合があります。
このような場合には、事故態様の詳細を示したしたうえで、判タ基準のどの事故類型に近いのか、同様の事案において裁判所が過去にどのように判断しているのか等を主張していくことになります。
判タ基準の修正要素を考慮していない場合
判タ基準においては、事故類型ごとに、基本的な過失割合だけでなく、その過失割合を修正する要素も定められています。
例えば、「幹線道路」、「住宅街・商店街」、「夜間」、「児童・高齢者」といった時間や場所、年齢による修正要素、「速度超過」、「合図なし」、「大回り右折」、「直近右折」といった事故直前の走行状況による修正要素などがあります。
時間や場所、年齢による修正要素については客観的な要素であるため、比較的立証は容易ですが、事故直前の走行状況による修正要素については、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像、自分の言い分に沿った内容で作成された捜査記録などがなければ立証は難しいといえます。
まとめ
過失割合によって、交通事故被害に遭われた方が受領できる賠償金は大きく左右されるものです。そのため、相手方保険会社からの提示をそのまま受け入れるのではなく、納得できない方は当然ですが、そのような方でなくても一度弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故の過失割合にいて、当事務所にご相談いただければ、相手方保険会社が提示している過失割合が適切なのか、不適切なのであればどれだけ修正できる可能性があるのか等を検討のうえご説明させていただきます。
当事務所では、交通事故に遭われた方に、お気軽にご相談いただけるよう、交通事故に関する初回相談を無料で行っておりますので、是非、北九州・小倉の当事務所までお気軽にご相談ください。