会社員の債務整理

会社員の債務整理

会社員の方は定期的に安定した収入はありますが、同じ会社で勤め続ける限りは突如収入が増えるということはありません。そのため、ギャンブルや浪費などをしていなくても、突発的な支出から借り入れをしてしまったり、慢性的な生活費の不足から借金が増えてしまった結果、債務整理を行う方が一定程度いらっしゃいます。

また、会社員の方からは、債務整理(任意整理、個人再生、自己破産)をしたいけど会社や職場に知られるのではないか、債務整理をしたことで仕事に悪影響があるのではないかといった質問をお受けします。

そこで、会社員の方が債務整理される場合の特徴や注意点を北九州・小倉の弁護士が説明いたします。

1 債務整理の種類

債務整理には、主に自己破産、個人再生、任意整理という手続きがあります。

まず、自己破産とは、裁判所に申立をして負債(借金)の支払い義務を全額免除してもらう手続きです。

次に、個人再生とは、裁判所へ申し立てることによって、減額された借金を原則3年(最大5年)かけて分割で返済していく手続きです。特に、住宅ローン返済中のときには、住宅ローン特則を使うことによって今まで通り住宅ローンの支払いを続けることが認められており、住宅ローンを支払いながら他の借金は減額して支払っていくことができます。

最後に、任意整理とは、債権者(銀行、消費者金融、カード会社など)との個別の話し合いによって、収入の範囲内で無理なく返済していけるように、借金を整理することです。

2 返済していく手続きを選択しやすい

会社員の方の場合、個人事業主(フリーランス)の方や専業主婦(夫)の方と比較して、安定した収入があることから、自己破産ではなく、長期間にわたり返済していくことを前提とする上記の個人再生や任意整理といった手続きを選択しやすいといえます。

特に個人再生については、会社員であることで安定した収入があるという要件を満たすことになりますし、給与所得がある方しか選択することができない給与所得者再生手続を選択することもできます。そのため、個人事業主(フリーランス)の方と比較して自宅も残しやすいといえるでしょう。

3 会社に知られる(バレる)ケースがある

自己破産や個人再生を選択した場合は、以下のように会社に知られる(バレる)可能性があるので注意が必要です。なお、債権者平等の原則の適用がなく、裁判所への申立ての必要もない任意整理を選択した場合は、会社に知られることは基本的にありません(下記⑸のケースを除く)。

⑴ 会社や職場からの借り入れがある際に知られる(バレる)ケース

債務整理を検討されている方の中には、自分が働いている会社からも借り入れをしている方がいらっしゃいます。

弁護士は、債務整理のご依頼を受けた場合には、債権者に対して受任通知を送付するのですが、自己破産や個人再生を行う場合は、上記の「債権者平等の原則」からすべての債権者を平等に取り扱わなければならないことになるので、会社や職場に対しても、自己破産や個人再生の受任通知を発送しなければなりません。万が一、一部の債権者にのみ支払いをしたり債権者を隠したりすると、「免責(借金をゼロにする決定)」を受けられなくなるなど大きな不利益を受ける可能性があります。

そのため、会社や職場に借り入れがある状態で自己破産や個人再生を行う場合、弁護士からの受任通知を受け取ることで、会社や職場に債務整理を行うことを知られることになります。

⑵ 会社(勤務先)を介して借り入れがある際に知られる(バレる)ケース

上記のように会社(勤務先)から直接借り入れがなくても、会社(勤務先)の労働組合を通じて労働金庫等の金融機関から借り入れをしている方や、公務員の方が共済組合から借り入れをしている方がいらっしゃいます。

このようなケースにおいても上記の債権者平等の原則からすべての債権者に受任通知を送付することになるところ、会社(勤務先)から直接借り入れがなくても、窓口が会社(勤務先)になっている場合には、会社(勤務先)に受任通知を送付せざるを得ません。また、共済組合に受任通知を送付したとしても、共済組合から会社(勤務先)に連絡がいく可能性が高いです。

そのため、会社(勤務先)を介して借り入れがある状態で自己破産や個人再生を行う場合についても、会社や職場に債務整理を行うことを知られる可能性があります。

⑶ 退職金証明書を取得する際に知られる(バレる)ケース

正社員の方が自己破産及び個人再生を行う際の必要資料として「退職金証明書」があります。

「退職金証明書」とは、会社(勤務先)が作成する退職見込額(仮にいま会社を退職した場合に退職金がいくら支給されるか)が記載された書類です。

そして、退職金証明書の発行を会社(勤務先)に依頼する場合、通常、理由を尋ねられることになりますが、ここで正直に債務整理のために必要だ、裁判所に提出するために必要だなどと説明すると、会社(勤務先)に債務整理をすることを知られてしまうことになります。

そのため、通常は、「金融機関から借り入れをするために、退職金証明書の提出を求められている」とか「住宅ローンの借り換えをするために、退職金証明書の提出を求められている」と説明されている方が多いようです(このような説明をして会社(勤務先)から疑われたという話を聞いたことはありません)。

もう一つの方法としては、就業規則、退職金規定などから自分で退職金を計算し、その計算書を提出するという方法がありますが、計算方法が複雑である場合や勤続年数を裏付ける資料がない場合等は、計算書では足りず、裁判所から退職金証明書の提出を求められることもあるので注意が必要です。

⑷ 官報を確認され知られる(バレる)ケース

官報とは内閣府が発行している機関紙であり、上記の自己破産及び個人再生を行うと、官報に氏名と住所が掲載されることになります。

しかし、官報を見ている人は、一般の方の中にはほとんどいませんし、会社や職場で官報を購読しているケースも非常に稀です。

そのため、通常のケースでは、官報によって会社や職場に自己破産や個人再生を行っていることが知られること可能性は極めて低いです。なお、公務員の方の場合、知り合いが税務課などで勤務していることが多く、官報に掲載されることになる自己破産や個人再生を避ける傾向があります。

⑸ 給与(給料)差押えにより知られる(バレる)ケース

自己破産や個人再生を弁護士に依頼した後、申立てに関する費用(管財費用、再生委員費用等)や必要資料の準備を行うことができずに、裁判所への申立てを長期間行うことができなかった場合、債権者から裁判を起こされ、最終的に給与(給料)が差し押さえられる場合があります(極めて短期間で裁判を起こしてくる業者もあります)。

給与(給料)が差し押さえられた場合、裁判所から会社(勤務先)に通知が送付されることに加え、債権者からも会社(勤務先)に連絡がいくことから、滞納している借金があることを知られることになります。これは任意整理を依頼している場合も同様です。

4 給与の振込先預金口座に注意が必要

会社員の方が給与の振込先口座にしている銀行(北九州であれば福岡銀行、西日本シティ銀行、北九州銀行、福岡ひびき信用金庫など)に借り入れがあり、その銀行(以下「給与振込金融機関」といいます。)を対象として債務整理を行う場合、弁護士は給与振込先金融機関に対して受任通知を発送することになります。

そして、給与振込先金融機関が受任痛通知を受領した時点で、

① 預金口座の残高は借入債務と相殺され、

② 口座自体も凍結され、

③ その後に入金される給与も当面引き出すことができなくなります。

この場合、給与振込口座を事前に変更するか、変更できない場合には、凍結が解かれるまでに振り込まれた給与を引き出せるよう弁護士が給与振込先金融機関と調整することになりますが、店舗のある金融機関については、窓口での出金に応じてもらえますのでご安心ください。

5 退職金に注意が必要

上記のように、正社員の方が自己破産及び個人再生を行う際の必要資料として「退職金証明書」があるところ、この金額の8分の1の金額が20万円以上である場合は注意が必要です。

具体的には、自己破産の場合は、その金額を裁判所ないし破産管財人に組み入れしなければなりません。また、個人再生の場合は、その金額を清算価値に加算しなければならず、事案によっては弁済しなければならない金額が増えることになります。

6 まとめ

会社員の方が債務整理をされる場合、安定した収入があるので選択肢は多いのですが、すでに述べたように会社員だからこその注意点も多く、会社に知られたくないということを重視し過ぎて、適切な選択をすることができなければ本末転倒です。そのため、自分にとって何が最良な手続きなのかを考えることが重要ですので、まずは弁護士にご相談されることをおすすめします。

当事務所は、これまで、会社員の方の債務整理手続きを多数取扱ってきましたので、豊富な実績経験があります。また、当事務所では、借金問題でお困りの方に、お気軽にご相談いただけるよう、借金に関する初回相談を無料で行っておりますので、是非、北九州・小倉の当事務所までお気軽にご相談ください。

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