【結論】給料を差し押さえられても、会社はあなたを解雇できません
裁判所から「債権差押命令」が勤務先に届き、経理や上司から事情を聞かれ、強い不安を感じているかもしれません。「会社に借金のことが知られてしまった、解雇されるのではないか」と不安に感じている方もいると思います。まずはどうか、落ち着いてください。今、あなたが一番恐れている事態は、法律上、簡単には起こり得ないのです。
給与差押えを受けた後でも、法的に取り得る対応は残されています。最初に、この記事の結論であり、あなたに知っていただきたい事実を整理します。
- 【事実】給与の差押えを受けたという事実だけを理由として、会社が従業員を解雇(クビに)することは、労働法上認められていません。
- 【事実】借金による差押えの範囲は、原則として「手取り給与の4分の1まで」と法律で制限されています(ただし、養育費の滞納などは2分の1までとなります)。
- 【事実】自己破産や個人再生を裁判所に申し立て、手続きが開始されると、現在進行中の給与差押えは法的に中止または失効します。これにより、再び給料を満額受け取れるようになります。
給与差押えで会社をクビになることは法律上ない
給料を差し押さえられたことで、会社に居づらさを感じたり、上司から厳しい言葉をかけられたりすることはあるかもしれません。しかし、それを理由に会社があなたを解雇することは、法的に極めて難しいと言えます。
日本の労働契約法では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効とされています(解雇権濫用の法理)。借金の滞納はあくまで私生活上の問題です。会社の資金を横領したといったケースとは全く異なり、業務そのものに直接的な支障をきたすわけではないため、「客観的に合理的な理由」にはあたらない可能性が非常に高いのです。
万が一、解雇を言い渡されたとしても、それは不当解雇として争える可能性があることを覚えておいてください。借金問題と労働問題は別次元の話なのです。ただし、債務整理が仕事に与える影響は限定的であり、まずは冷静に状況を立て直すことに集中しましょう。
会社に借金の事実が知られることは避けられない
一方で、残念ながら、給与差押えの手続きが始まってしまった以上、会社に借金の事実を知られずに済ませる方法はありません。
給与差押えは、裁判所が会社(第三債務者)に対して「この従業員の給料の一部を、債権者に直接支払いなさい」と命じる法的な手続きです。そのため、裁判所から「債権差押命令」という正式な書類が勤務先の社長や経理担当者宛てに送達されます。これにより、あなたが借金を滞納しているという事実は、会社の関係者に知られることになります。
会社に知られることに心理的な負担を感じる方は少なくありません。しかし、隠し通そうとすることはできません。会社に知られた後は、差押えを止めるための法的手続きと、勤務先への必要な説明を落ち着いて進めることが重要です。差押え前の段階で家族や職場に知られずに対処する方法もありますが、すでに始まってしまった場合は、迅速な事後対応が鍵となります。
毎月いくら引かれる?差し押さえられる給与額の上限ルール
解雇の問題とは別に、毎月の給与からいくら差し引かれるのかという点も重要です。「給料を全額持っていかれて生活できないのでは」と心配されるかもしれませんが、法律は債務者の生活を守るために、差押えできる金額に上限を設けています。
計算の基準となるのは、社会保険料や税金を引かれた後の「手取り額」です。額面の給与ではありませんので、ご安心ください。

原則は「手取り額」の4分の1まで
消費者金融からのキャッシングやクレジットカードのリボ払いの滞納など、一般的な借金が原因の場合、差し押さえられる金額の上限は「手取り額の4分の1」と定められています。
- 例:手取り月収が20万円の場合 → 差押え上限は5万円
- 例:手取り月収が28万円の場合 → 差押え上限は7万円
残りの4分の3は、これまで通りあなたの生活費として受け取ることができます。ただし、手取り額が44万円を超える高所得者の場合はルールが少し異なり、「33万円を超えた部分の全額」が差押えの対象となります。
【例外】養育費や婚姻費用の滞納は2分の1まで
注意が必要なのは、滞納しているものが養育費や婚姻費用(別居中の配偶者の生活費)など、扶養に関する義務の場合です。これらは子の生活を守るためのお金という性質上、法律で特に重要視されています。
そのため、差押えの上限が引き上げられ、「手取り額の2分の1」まで差し押さえることが可能になります。
- 例:手取り月収が20万円の場合 → 差押え上限は10万円
このように、通常の借金よりも非常に厳しいルールが適用されます。もし借金と離婚の問題が重なっている場合は、特に迅速な対応が求められます。
差押えの上限に関する詳しい規定は、以下の法律で定められています。
参照:民事執行法
給料の差押えを法的に止める2つの方法
手取りの4分の1、または養育費等の場合は2分の1が毎月差し押さえられると、家計への影響は大きくなります。始まってしまった給与差押えを止める方法は、債権者に借金を全額返済する以外には、法的な債務整理手続きしかありません。
実務上、進行中の差押えを止めるための最も強力な手段が「自己破産」と「個人再生」です。どちらも弁護士に依頼し、裁判所に申立てを行うことで、法律の力によって差押えをストップさせることができます。
平井・柏﨑法律事務所(北九州市小倉北区)では、給与差押えを受けている方の債務整理のご相談を初回60分無料でお受けしています。あなたの状況を丁寧にお伺いし、どちらの手続きが最適かを客観的に判断します。
①自己破産|裁判所の開始決定で差押えは「失効」する
自己破産は、裁判所に支払不能であることを認めてもらい、税金や養育費など一部の非免責債権を除き、借金の支払義務の免除を目指す手続きです。
弁護士に依頼して裁判所に自己破産を申し立て、裁判所が「破産手続開始決定」を出すと、その時点で進行している給与差押えは効力を失います(失効します)。これは破産法という法律で明確に定められています。効力を失うということは、会社は給料の天引きを法的に停止しなければならなくなり、あなたは再び給料を満額受け取れるようになるのです。
私は、福岡地裁小倉支部・行橋支部から選任される現役の破産管財人として、多くの手続きに携わってきました。その実務経験から申し上げると、破産手続開始決定が出た場合、法律の規定により進行中の強制執行の効力が問題となります。詳しくは「自己破産のメリット・デメリットや手続きの流れ」のページもご覧ください。
②個人再生|裁判所の開始決定で差押えは「中止」される
個人再生は、裁判所の認可を得て、法律上の基準に従って借金を減額し、それを原則3年で分割して返済していく手続きです。
個人再生も自己破産と同様に、裁判所に申し立てて「再生手続開始決定」が出ると、進行中の給与差押えは「中止」されます。これは民事再生法で定められています。「失効」と「中止」という言葉の違いはありますが、会社からの天引きが止まり、給料を満額受け取れるようになるという効果は同じです。
特に、住宅ローンを抱えていてマイホームを手放したくない場合など、個人再生が非常に有効な選択肢となることがあります。もし住宅ローンが払えない状況であれば、この手続きを検討する価値は十分にあります。
【危険】差押えを放置すると、他の債権者からも差押えを受ける可能性があります
毎月の差押えを我慢していればいずれ終わると考える方もいますが、複数の債権者がいる場合は注意が必要です。
もし、あなたがそう考えているとしたら、それは非常に危険なサインかもしれません。北九州エリアで、給与差押えを受けて生活が行き詰まってしまった方からのご相談を多数お受けしてきましたが、放置して事態が好転したケースは一つもありません。
複数の債権者がいる場合、差押えを放置すると別の債権者からも差押えを受ける可能性があります。

1社の返済が終わっても、次の債権者が差し押さえてくる
複数の金融機関から借入れがある「多重債務」の状態に陥っている場合、問題はさらに深刻です。
たとえば、A社からの借金に対する差押えが始まり、数年かけてようやく完済したとします。しかし、それで終わりではありません。B社、C社といった他の債権者も、別途給与差押えを申し立てる可能性があります。1社の差押えが終わった後、次の債権者が給与差押えを申し立てる可能性があります。
なぜなら、一度差押えが行われると、あなたの勤務先情報は他の債権者にも知られやすくなるからです。そうなれば、給料が減額された状態が何年も、場合によっては10年以上も続くことになりかねません。これは、生活再建の機会を完全に失ってしまうことを意味します。この複数債権者からの差押えリスクに対応するには、全ての借金を対象とする債務整理手続きが不可欠です。
給与差押えに関するよくあるご質問
最後に、差押えを受けてパニックになっている方からよくいただくご質問にお答えします。
Q. 差押えから逃れるために、今の会社を退職すれば止まりますか?
A. 退職すれば、その会社からの給与の支払いはなくなりますので、給与差押えはいったん止まります。しかし、これは全く解決になっていません。
まず、退職金が支払われる場合、その退職金も差押えの対象となります。さらに、債権者はあなたがどこに転職したかを調査し、新しい勤務先に対して再び給与差押えを申し立ててくる可能性があります。根本的な借金問題が解決しない限り、転職を繰り返すことになり、安定した生活を取り戻すことはできません。自己破産中の転職自体は可能ですが、差押えから逃れるためだけに退職しても、根本的な解決にならず、生活や返済の見通しがさらに不安定になる可能性があります。
Q. 差押えで生活が苦しく、弁護士費用が払えません。
A. 弁護士費用について不安を感じる方は少なくありません。当事務所では、弁護士費用の分割払いに対応しております。
費用面に不安がある場合も、現在の収支や差押えの状況を含めてご相談ください。詳しくは債務整理の料金表もご覧いただけますが、あなたの生活状況に応じて柔軟に対応いたします。
まとめ:差押えは放置せず、すぐに弁護士へご相談ください
給与の差押えは、単に「恥ずかしい」「気まずい」という問題ではありません。放置すれば、毎月の収入が減少し続け、家計や生活再建に大きな影響が出るおそれがあります。
しかし、この記事でお伝えした通り、落ち着いて法的な対応を検討することが重要です。
- 給与差押えを理由に会社をクビになることはありません。
- 自己破産や個人再生という法的な手続きを踏むことで、差押えを中止または失効させられる場合があります。
会社への影響をこれ以上長引かせず、一日も早く平穏な生活を取り戻すために、一人で判断せず、法的な対応方針を確認することをおすすめします。裁判所から届いた書類や給与明細などをお持ちいただければ、より具体的なお話ができます。
福岡地裁小倉支部・行橋支部から選任される現役の破産管財人として、実務の事実に即して、状況に応じた解決策を検討します。北九州市小倉北区の当事務所では、初回60分の法律相談を無料でお受けしています。まずはご予約のうえ、初回60分無料の法律相談をご利用ください。

北九州・小倉の法律事務所「平井・柏﨑法律事務所」で、暮らしに寄り添った法的サポートを行っています。債務整理、離婚問題や不倫慰謝料請求、交通事故など、身近な悩みに丁寧に耳を傾け、安心できる解決を目指しています。小倉駅から徒歩5分、アクセスも便利。地域のみなさまが気軽に相談できる場所でありたいと考えています。
