【結論】小倉支部・行橋支部の振り分けは「財産の額」と「事件の種類」で決まる
自己破産を検討する際、ご自身のケースが「同時廃止」で済むのか、それとも「管財事件」になるのかは、費用や手続きの負担に関わる大きな関心事です。この振り分けは全国一律ではなく、裁判所ごとの運用基準によって決まります。福岡地方裁判所小倉支部・行橋支部で破産管財人を務める立場から、両支部で運用されている振り分けの基準と、管財事件になった場合に実際に行われる手続きについて客観的な事実を解説します。
最初に、この記事の結論となる3つの重要な事実をお伝えします。
- 【事実】福岡地方裁判所小倉支部・行橋支部では、定められた7つの財産項目のうち「いずれか一つの項目でも20万円以上」ある場合や、現金・預貯金・弁護士への預け金の合計が「33万円」を超える場合に原則として管財事件となります。
- 【事実】目立った財産がなくても、過去を含め個人事業主・法人代表者であった場合や、ギャンブル等の免責調査が必要な場合などは、管財事件に振り分けられます。
- 【事実】管財事件は決して不利益な処分ではなく、破産管財人の調査を受けたうえで適切に免責(一部の非免責債権を除き、返済責任を免れること)に至るための正当な法的手続きです。
自己破産の全体像については、こちらの記事もご参照ください。→自己破産の全体像
【一覧表】小倉支部・行橋支部における振り分け基準の全体像
福岡地方裁判所の申合せに基づき、小倉支部・行橋支部でも同じ基準で自己破産手続きの振り分けが運用されています。基準は大きく分けて「A.財産の額で決まる場合」と「B.事件の種類で決まる場合」の2つです。

| カテゴリ | 主な基準 | 判断 |
|---|---|---|
| A.財産の額で決まる場合 | ・特定の財産項目(預貯金、保険等)の合計額が20万円以上・現金、預貯金等の合計額が33万円以上 | 原則として管財事件 |
| B.事件の種類で決まる場合 | ・過去に法人代表者や個人事業主だった・不動産を所有している・ギャンブルや浪費等の免責調査が必要 | 原則として管財事件 |
| 上記に該当しない場合 | 原則として同時廃止 |
ここで重要なのが「20万円」という基準額です。これは、管財事件になった際に裁判所に納める予納金の最低額が20万円(官報公告費は別途必要)であることに由来します。つまり、破産を申し立てる方が持っている財産がこの額に届かなければ、破産管財人を付けて財産を換価・配当する手続きの費用を賄えないため、手続きを「同時廃止」する、という考え方に基づいています。
自己破産の費用については、こちらの記事もご参照ください。→自己破産の費用と予納金
財産の額で決まる基準(「項目ごと20万円」と「33万円」の線引き)
財産の額に関する基準で最も重要な点は、単純に「全財産の合計額」で判断されるわけではない、という点です。小倉支部・行橋支部では、財産を以下の7つの項目に分けて評価します。
- 預貯金と弁護士への預け金(申立て直前の給与・年金が入った普通預金は除く)
- 保険の解約返戻金
- 住んでいる家以外の敷金
- 退職金見込額の8分の1
- 自動車
- 家財道具などの動産
- 債権・有価証券などの財産権
退職金については、こちらの記事もご参照ください。→自己破産で退職金・iDeCoは没収?北九州の弁護士が解説
最重要:全財産の合計ではなく「項目ごと」に20万円か判断する
多くの方が誤解されがちなのですが、小倉支部・行橋支部の運用では、上記7つの項目をまたいで財産額を合算することはありません。それぞれの項目内で合計した額が20万円以上かどうかで、管財事件になるかが判断されます。
例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。
- (1) 預貯金:15万円
- (2) 保険の解約返戻金:15万円
- (3) 敷金:15万円
この場合、財産の合計額は45万円となり、20万円を大きく超えています。しかし、どの項目も単体では20万円に達していません。そのため、他の条件に問題がなければ、原則として同時廃止手続きとなります。この「項目ごと」というルールが、ご自身の見通しを立てる上で極めて重要なポイントになります。
自動車・現金・預貯金の特殊なルール
財産の中でも、自動車、現金、預貯金の扱いには特殊なルールが存在します。
まず自動車については、初度登録から5年を過ぎていれば、原則として財産価値は0円と評価されます。ただし、ハイブリッド車、電気自動車、外車、排気量2500ccを超える車の4類型は例外です。これらは5年を経過していても価値が残っている可能性があるため、査定が必要となり、その結果20万円以上であれば管財事件の対象となります。
債務整理と自動車については、こちらの記事もご参照ください。→債務整理で車は残せる?所有権留保と車検証の見方を北九州の弁護士が解説
次に現金ですが、法律上99万円までは「自由財産」として手元に残すことが認められています。このため、上記の7項目評価には含まれません。しかし、これとは別に重要な基準があります。それは、「現金・預貯金(給与振込口座も含む)・弁護士への預け金」の合計が33万円を超える場合です。この33万円という金額は、標準的な世帯の1か月分の生活費が目安とされており、これを超える場合は管財事件となります。この基準は、自由財産の拡張と小倉支部の運用とも関連する重要なポイントです。
申立ての直前に生命保険を解約して現金化したような場合、そのお金は現金として扱われますが、この33万円の基準に含まれることになります。また、解約の経緯や時期によっては、財産を隠そうとしたと疑われ、調査のために管財事件に振り分けられる可能性もあるため注意が必要です。
事件の種類で決まる基準(財産が無くても管財事件になる場合)
ここまでは財産の額に基づく基準を説明してきましたが、たとえ財産が20万円未満であっても、以下のようなケースでは原則として管財事件に振り分けられます。
- 法人の代表者や個人事業主である人・だった人
過去に事業を営んでいた場合、その期間に法的な限定はありません。事業用の資産や売掛金、帳簿の調査などが必要になるため、管財事件となります。詳細は自営業者の破産に関する記事もご参照ください。 - 不動産を所有している人
住宅ローンが不動産の価値を上回る「オーバーローン」状態であっても、直ちに同時廃止にはなりません。不動産の価格、ローンの残高、売却のしやすさなどを総合的に考慮し、管財人による調査が必要か裁判官が個別に判断します。 - 財産状況や借金が増えた経緯がはっきりしない人
提出された資料だけでは財産の全体像が不明確であったり、借金の理由が曖昧であったりする場合、調査のために管財人が選任されることがあります。 - 財産を不当に処分した疑いがある人
破産直前に財産を不当に安く売却したり、一部の債権者にだけ返済したりする行為は、他の債権者との公平を害します。このような財産隠しが疑われる行為があった場合、管財人がその行為の効力を否定し、財産を取り戻す(否認権の行使)必要があるため、管財事件となります。 - ギャンブル・浪費等で免責調査が必要な人
借金の主な原因がギャンブルや過度な浪費である場合、法律上「免責不許可事由」に該当する可能性があります。この場合、本当に免責を認めてよいか、破産管財人が生活状況などを調査した上で、裁判所が裁量で免責を判断することになります。詳しくはギャンブルが原因の自己破産の記事をご覧ください。
ただし、これらの類型に該当する場合でも、申立ての際に提出する資料だけで管財人による調査や換価作業が不要であると裁判官が判断すれば、例外的に同時廃止となる可能性はあります。平井・柏﨑法律事務所(北九州市小倉北区)では、破産管財人・個人再生委員を務める弁護士が、自己破産のご相談を初回60分まで無料でお受けしています。最終的な判断は裁判官が個別の事情を考慮して行うため、まずはご自身の状況を正確に専門家へ伝えることが大切です。
管財事件になると実際に何が起きるのか
「管財事件」と聞くと、何か罰則のように感じて不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは誤解です。管財事件はペナルティではなく、一部の非免責債権を除き返済責任を免れること(免責)を受けるために、中立公正な立場の破産管財人による調査等を経て、手続きを適正に進めるための正当な法的手続きです。
実際に管財事件になると、主に以下のことが行われます。

- 裁判所への予納金20万円の納付
破産管財人の報酬等にあてられる費用として、裁判所に20万円(官報公告費は別途)を納める必要があります。 - 破産管財人との面談
裁判所から選任された破産管財人(弁護士)の事務所で面談が行われます。借金の経緯や財産状況について、正直に説明することが求められます。 - 郵便物の転送
手続き期間中、ご自身宛ての郵便物は一度破産管財人に転送され、内容を確認された後、手元に届けられます。これは、申告していない財産や債権者がないかを確認するために行われます。 - 債権者集会への出席
裁判所で開かれる債権者集会に、代理人弁護士と共に出席します。破産管財人から財産状況や免責に関する調査結果が報告されます。
手続きにかかる期間は、財産の換価や調査の状況によりますが、一般的に同時廃止に比べて長くなります。債権者集会の回数によって期間は変動します。他の事務所で断られたケースであっても、管財事件として手続きを進めることで免責を得られる可能性があります。
よくあるご質問(小倉支部の運用について)
最後に、これまで解説した内容について、特に多く寄せられるご質問にお答えします。
自己破産に関するよくあるご質問はこちらもご参照ください。→自己破産のよくあるご質問【北九州・小倉】
Q. 同時廃止なら裁判所に行く必要はある?
同時廃止であれば、福岡地方裁判所小倉支部・行橋支部の場合に裁判所に行くことはほとんどありません。稀に「免責審尋」という手続きのために、裁判所に出頭する必要があることがあります。これは、裁判官が直接ご本人から話を聞き、免責を許可してよいか最終判断するための手続きです。
Q. 財産が20万円を超えたら必ず管財事件?
まず、これまで説明した通り、判断基準は「全財産の合計」ではなく「項目ごと」です。項目をまたいで合算することはありません。
その上で、仮にある一つの項目が20万円を超えていたとしても、必ず管財事件になるとは限りません。例えば、申立ての資料だけでその財産の価値や処分方法が明確であり、破産管財人による換価作業が不要だと裁判官が判断した場合には、例外的に同時廃止となる可能性もあります。最終的な判断は、個別の事情を考慮した上で裁判官が行います。
Q. 車があると管財事件になる?
自動車の扱いは、初度登録からの経過年数が大きなポイントです。初度登録から5年を経過していれば、原則として資産価値は0円と評価されるため、それだけを理由に管財事件になることはありません。
ただし、重要な例外として「ハイブリッド車、電気自動車、外車、排気量2500ccを超える車」の4類型は、5年経過後も査定が必要となります。その査定額が20万円以上であれば、管財事件になる可能性があります。
Q. オーバーローンの家があると管財事件?
住宅ローンの残高が不動産の査定額を上回る「オーバーローン」状態であっても、直ちに同時廃止にはなりません。不動産を所有しているというだけで、原則として管財事件の対象となります。その上で、不動産の価格、ローンの残高、売却のしやすさなどを総合的に考慮し、管財人を付けて調査・換価手続きを進めるべきか、裁判官が個別に判断することになります。
住宅ローンの問題については、こちらの記事もご参照ください。→住宅ローンが払えない…家を売る前の選択肢を北九州の弁護士が解説
Q. 管財事件の予納金はいくら?
福岡地方裁判所小倉支部・行橋支部における管財事件の予納金は、最も簡易な事件で最低額が20万円です。これとは別に、官報に掲載するための公告費(1万数千円程度)が必要になります。当事務所では、弁護士費用については分割払いに対応しておりますので、費用の面でご不安な方もまずはご相談ください。
債務整理の料金表については、こちらの記事もご参照ください。→債務整理の料金表
自己判断は禁物。まずは専門家へご相談ください
ここまで福岡地方裁判所小倉支部・行橋支部における振り分け基準を解説してきましたが、ご自身のケースがどちらに該当するかを正確に判断するには、預金通帳や保険証券、車検証といった客観的な資料を精査する必要があります。

「管財事件になりたくない」という思いから、自己判断で申立て直前に保険を解約したり、預金を引き出したりすると、かえって財産隠しを疑われ、調査のために管財事件を招くことにもなりかねません。
当事務所は弁護士費用の分割払いに対応しており、債務整理のご相談は事前のご予約で夜間も対応しております。正確な見通しを立てるためには、まず客観的な資料を拝見することが不可欠です。まずは資料をお持ちの上、北九州市小倉北区の平井・柏﨑法律事務所へ初回60分無料の対面相談にお越しください。

北九州・小倉の法律事務所「平井・柏﨑法律事務所」で、暮らしに寄り添った法的サポートを行っています。債務整理、離婚問題や不倫慰謝料請求、交通事故など、身近な悩みに丁寧に耳を傾け、安心できる解決を目指しています。小倉駅から徒歩5分、アクセスも便利。地域のみなさまが気軽に相談できる場所でありたいと考えています。
